こんにちは、youheiです。
2019年は松田優作の没後30年だけでなく、代表作「蘇える金狼」の映画版公開40年とドラマ版放送20年という節目の年でもありました。
松田優作ファンにとって、やはり「蘇える金狼」「野獣死すべし」の二作品は外せない逸品ではないでしょうか。
双璧として挙げておきたい「野獣死すべし」ももちろん素晴らしいのですが、こちらは気分が重くなってしまい娯楽作品として素直に楽しめないという思いがあります。
ところで「蘇える金狼」は映画版とドラマ版の二種類がありますが、この記事を読まれたあなたはどちらに思い入れがありますか?
私はやはり映画版が好きですが、松田優作の作品ではトータルとして一番として挙げたいと思います。
エンターテイメントとして必要な要素がすべて入っているように感じるからです。
ちなみに「蘇える金狼」を英訳すると“The Resurrection of the Golden Wolf”というのも何だかカッコいいですね。
アマゾンプライムビデオでも取り扱っているので気になる人はチェックですね。
しかも蘇える金狼だけでなく遊戯シリーズやブラック・レインほか名作もそろっています。
蘇える金狼・香取慎吾版
一方で松田優作没後10年・映画版が公開されて20年の1999年にドラマ版「蘇える金狼」が放送されました。
朝倉哲也役が元SMAPの香取慎吾ということで、期待半分の気持ちで観ていました。
オンエアされた当時の印象として、全体的にはそれほど悪くはなく、特に音楽(とオープニング)については圧倒的なカッコよさを感じました。
音楽の良さは映画版とドラマ版に共通する事項でもあります。
朝倉哲也・表の顔
表向きの朝倉哲也のいかにも気弱そうなキャラクターが実に良かったと思います。
映画版の場合は、いくらカツラをかぶって変装していても違和感がぬぐえなかったし、いかつさがにじみ出ている気がして裏の顔と大きな差がなかったようにも見えました。
朝倉哲也・裏の顔
裏の顔の朝倉哲也はやっぱり松田優作が演じたものが圧倒的に良かったです。
数々のアクションシーンを見て、今も昔も松田優作以上の人材はいないと感じました。
こういう人は二度と現れないでしょう。
ドラマ版は香取慎吾も撮影のために肉体改造に取り組んだとはいえ、凄みを感じ取ることができなかったです。
映画蘇える金狼について
予告編で使用された銃声は本物です。
松田優作が役作りのためにハワイへ行った時に射撃訓練をしたときのものだという話です。
千葉真一も出演していましたが、同じ1979年に出演した「戦国自衛隊」と比べるとインパクトが弱かったです。
桜井光彦役(小説版では桜井由紀夫という名前)は千葉真一でなくても良かったようにさえ思えましたが…
トビー門口は渡哲也作品「ゴキブリ刑事」「ザ・ゴキブリ」で観たのですが、松田優作出演作品でも蘇える金狼以外にも「処刑遊戯」「野獣死すべし」「陽炎座」「ヨコハマBJブルース」そしてドラマ「探偵物語」でも共演。
けっこう松田優作と共演していたんですね。(陽炎座に出ていたのはちょっと知らなかったです)
映画後半で成田三樹夫演じる小泉経理部長の「金子がネ〜」というセリフが刑事コロンボの「ウチのカミさんがね〜」みたいに聞こえてしまったのは筆者以外にもいるかもしれません。
岸田森の怪演ぶりにはチョイ役ながら強烈なインパクトを与えてくれました。
あのアヤシゲな日本語のイントネーション「ギャラぁ〜高いヨ〜」と「怨み、深いヨ〜」ほか、アジトで朝倉に撃たれた時の障子戸に放ったエルボーは見もの。
冒頭で朝倉がバイクでディスコに向かう途中で流れるBGMは「俺たちは天使だ!」でも使用されていた楽曲。
(クラブドミンゴの店内で流れる楽曲とは別)
朝倉が社長たちから株券を手にして部屋から出た後に警備員に「オイ、明日からヒゲ剃ってこい」というセリフはアドリブなのか?
(社長一味への脅迫の後の「オイ、大株主にコーシーぐらい持ってこんか!」もアドリブ?)
磯川邸で朝倉による銃火器に関する細かい描写があるのは、原作にも見られるところから共通点といえるか。
ドラマ版蘇える金狼について
ドラマ版蘇える金狼の脚本が丸山昇一氏ということで期待を寄せたファンも多かったのではないかと思いますが、ドラマ版探偵物語の第一話で脚本家デビューしたあと、処刑遊戯、野獣死すべし、ヨコハマBJブルース、ア・ホーマンスを手がけました。
気になった細かな点について並べていくと次のとおりです。
甘木がかつて勤務していた東洋銀行は「野獣死すべし」で襲撃した銀行と同じ。
甘木と広木が同じ大学で射撃部だったというのも「野獣死すべし」の設定を引き継いだかたちか。
広木が傭兵として世界各地の戦場を渡り歩いていたのも、やや伊達邦彦に似た経歴を歩んでいること。
(伊達邦彦は傭兵ではなく、通信社を退職後に戦場カメラマン)
石原が着用していたイデタチが探偵物語の工藤ちゃんと同じような姿だったこと。
朝倉が石原を連れて射撃訓練するのも野獣死すべしと似ていること。
有梨沙が社内でパソコン操作している時に一瞬だけ丸山昇一氏の顔写真が映る。
映画版では”おくすり”が出てくるが、ドラマ版にはなし。
小説版の金狼に該当する人物は、いかりや長介だろうか。
孤独のグルメでブレイクした松重豊の寡黙なバーテンにも注目。
宝竜会のヤクザ役だった高杉亘は風貌や声が松田優作に似ていて、見事にハマっていました。
いかりや長介と麿赤兒の冷徹なヒットマンの存在感が異様でした。
参考文献
松田優作物語 秋田書店